安倍よ。西部の提言を素直に聞け

 【正論】西部邁 カイカクに終止符を打て

西部の文章は個人的に久々に読む。昔はよく朝まで生テレビで見かけたのだが、その後は小林よしのりと喧嘩したり、仲直りしたり、また決別したり、大学の学長をやったり色々していたという印象だ。それはともかく保守主義の彼の発言はやはり重みがある。

過ぐる参院選自民党が大敗した真因は何か。

その答えは、多くの選挙民が日本国家の現状に、漠たるものとはいえ根強い不平不満を、抱きはじめているということ以外ではありえない。

今回の選挙の結果は「安倍の自爆」なのか「小泉構造改革」そのものへの疑義なのか、私はまだ断言は出来きない。
西部は断言しているが、根拠はまあ、彼の「感覚」であろう。
続けて西部は言う。

小泉改革を頂点とする平成改革は、富者と貧者、大集団と小集団そして中央と地方それぞれのあいだに(国柄から外れているという意味で、過剰な)格差を、少なくともその感覚を、国民意識にもたらした。その被格差感は「公正と安定」から程遠いのが日本国家の現況なのではないか、との疑念をこの列島の津々浦々にまで広めた。

 安倍首相は「構造改革に疑義あり、平成改革は軌道修正さるべし」と、(おそらくは)本心を表明すべきではなかったのか。そうしておいても民意に敏感なマスコミ勢力は、首相に激しくは抵抗しなかったであろう。また政治家諸氏も、マスコミ世論に追随するのを旨としているので沈黙したに違いない。

確かに安倍就任以来、安倍は実は構造改革には反対なのではないかと言う印象は私は持っていた。しかし、彼の地位は小泉によって得られたもの。彼は反旗を翻すことは出来なかった。ここらへんがイマイチ安倍の煮え切らないところである。しかも、いまなお「改革を断行」とか言ってるし。

 「地域の復興」をめざす安倍内閣の努力も、歴代内閣による「地域の破壊」に、歯止めを与えんとする企てである。しかし安倍首相は、集票のために「改革断行」と叫んでしまった。

安倍は叫ばざるを得なかったのであろう。なぜなら、「本心」を言ってしまえば、必ず小泉を糾弾することになるからだ。それは彼を支える最大の後ろ盾を失うことを意味する。

 かつて小沢一郎氏は「国民は自己責任で生活せよ、“小さな政府”へ向けてカイカクを断行せよ」と叫んでいた。その民主党代表が、今度の選挙では「生活が第一」と宣うていた。カイカクの“弊害”を減らすべく励んでいる安倍首相が、選挙となれば「カイカク断行」と叫ばざるをえなかった。こうした二枚舌の流行をこの列島から追いやるにはどうすればよいのか。

小沢は空気を読める人で、安倍は空気を読めない人であった、ということであろうか。実際は民主の政策も「生活が第一」なのかどうかはかなり怪しいのであるが、「生活が第一」というスローガンは国民の心を打ったのであろうか。
 で、この「空気」をどうすればいいのかと?

どうにもならんでしょ

今朝もTBSの朝の番組を見てたが三文コメンテーターが「でも、ばら撒きには戻れないよね」などという不見識丸出しのことを未だに言い続けていた。マスコミも何も変わってはいない。とにかく「ばら撒きは悪」それが最近の「流行」なのである。それに反するものはみな「非国民」である。根拠などなくていいのである。なんせバラまきをやってる議員は人相が悪い、とでも言えばマスコミ的には「説明」は完了である。戦時下の報道となんら変わらぬ白痴ぶり。

もちろん自民党内にも以下のような意見はある。
 改革路線への批判相次ぐ=自民の参院選総括委で

改選数1の「1人区」で多数が敗北したことを受け、出席者からは地方への公共事業拡大や構造改革路線の見直しを求める声が相次いだ。
 席上、野田毅自治相は「自民党(執行部)は公共事業性悪説で、田舎の気持ちを分かっていない」と批判。衛藤征士郎防衛庁長官は「(敗北は)地方への手当てができなかった結果で、小泉政権以来の路線の修正を含め考えるべきだ」と述べた。

しかし彼らは「小泉改革」に対してどんな抵抗を試みたのであろうか?議席を獲得するために小泉という麻薬に頼っていたのは彼らではないか。真に小泉改革に反対した人々は綿貫であり、亀井である。

自民党が政権維持のためにカイカクなんて打ち出した罪過は重い。