原子力小説第3話【不定期連載小説】

A助教授「おい。挨拶ぐらいしろ」

C助手が傍を通り過ぎて行こうとしたのを呼びとめようとした。
が、C助手は聞こえないのか、聞こえないふりをしているのか、さっさと消えてしまった。

A助教授「くそ。相変わらず生意気な奴だ。俺様をなんだと思っていやがる。」

吐き捨てるように行った。

C助手はB教授はどこからか拾って来た博士だ。
何やらいつも難しい顔をしており、A助教授のいうことを全く聞かない。

毎日、罵倒や叱責を繰り返していたら、学内のパワハラ委員会に告げ口したらしく、教授会で問題になったらしい。
B教授は高名なもののこの大学では外様で、教授会では立場が悪い。
おまけにA助教授は学生や秘書を何人も「再起不能」にした前科がある。
そのためB教授は今度はかばいきれず、教授会の結果、A助教授は【C助手に対する接触禁止】を申し渡されたのであった。

A助教授「ふん。まあ、どうせ1人では何も出来んだろう。将来の教授の座は俺のものだ。」

心の中でつぶやいて気付いた。その「将来」が今や崩れ落ちようとしているのだ。
B教授の狼狽ぶりは普通ではなかった。
A助教授はやがて来る最悪の未来に胃が痛くなってきた。
気を紛らわせるためタバコを吸おうとしたが

前から歩いてきた秘書に止められた。

D秘書「A助教授。今月から全面禁煙ですよ」

D秘書は古参の事務員で、さすがのA助教も頭が上がらない。

A助教授「あ、すいません。」

A助教授「くそ。タバコを吸うことすらできないのか。会社にいたままの方が良かった。こんなことになるんだったら大学なんて来るんじゃなかった。」

A助教授は会社でも傲慢な態度で評判が悪かった。B教授から、大学に来ないかと誘いを受けると、これ幸いとすぐに会社を止めた。その時に誰からも引き留めの言葉がなかったことをA教授は今でも気にしている。結局、居づらかったのである。もちろん、人には「大学だったら自由に研究できると思った。それに早起きしなくてよさそうだし」とうそぶいていた。