あの時君はバカだった。そして今でも
こうるさく権利請求する「負け組」どもを、非難の声も異議申し立てのクレームも告げられないほど徹底した
「ボロ負け組」に叩き込むことに国民の大多数が同意したのである。
日本人は鏡に映る自分の顔にむけてつばを吐きかけた。
(勝者の非情・弱者の瀰漫 内田樹の研究室 2005年9月13日より引用。)
上の文章は、2005年の郵政選挙の際に思想家内田樹が書いたものである。
当時の状況を的確に表した文章と言えよう。
あれから2年経った。現在は2年前とは状況がガラリと変わったかのように見える。
格差に賛成したはずの国民は格差是正を求める大合唱。
格差社会の勝ち組だったはずのITベンチャー社長や投資ファンドのは軒並み逮捕されるか、国民に石を投げら
れる事態になった。
自己責任を強調した小泉を支持した国民は年金がもらえないかも知れないとパニックになっている。
「痛みは自分じゃない誰かが引き受けるものだし、自己責任は自分じゃない誰かが負うもの」
とんでもなく甘い認識であるが、2年前に国民のほとんどはそう考えていたのである。
信じられないことに20代の若者、特に普段選挙に行かない層が熱烈に支持していた。
全く根拠のない期待と熱狂だった。
その根っこにあったのは想像力の欠如。そうとしか形容出来ない浅はかさであった。
痛みが増税や貧困層の増大、「年金問題」と言う形で現れて来て初めて国民の大多数は気づいたかのようにも見える。
最近の各種新聞は民主党が今度の選挙で勝利すると書いている。あの事実上与党の機関紙である産経でさえ与党が過
半数を取れないと書いているのである。
まるで白が黒になったような。一見そんな風に見える。
しかし、実際はそうじゃない。
国民が自民党の代替物として選ぼうとしている民主党もやっぱり自民党と同じアナのムジナ
の構造改革厨であり、緊縮財政厨である。
先日のエントリーに載せたコピペを再掲する。
現在の政治の対立軸は、
自民党-リフレなき改革のままグダグダ
VS
民主党-改革+保護政策(ただしデマンドサイドにはほぼ関心なし)
VS
左派・市民派-反市場原理・弱者保護・共生と言いつつデマンドサイドは無理解
VS
旧保守(国民新党)-適度な市場原理+適度な保護主義+需要刺激(ただしリフレ派が望むような
形で行われるか否かは不明)
結局は経済学的な視点から見れば、
善人面している野党も、一部を除いては、結果的に国民を地獄に叩き込む政策を唱えているのである。
まさに、地獄への道は善意で敷き詰められている、のである。
今回の選挙で民主党が勝利しても、別の地獄が始まるだけである。
今回の選挙は焦熱地獄か極寒地獄かを選べと言っているのである。
どちらも優しい笑顔で国民を迎えようとしてる。
「こっちが天国ですよ!」と。
国民はどこかにあるはずの天国を求め、地獄に堕ちる。
運命だとは私は言わない。人間のどうしようもない性(さが)であると私は思う。
そもそも世の中の正しさというのは国民の期待や熱狂とは全く関係ないところにあるのである。
経済などはその最たるものだろう。
国民は天使かも知れない。無邪気で善人だ。
でも、あまりにも自分の願望や道徳が強すぎて、正しく物を見れないのかも知れない。
そして私は自分のバカさは棚に上げて言う。
あの時君はバカだった。そして今でも。