「立国の基は「ものづくり」にあり」は本当か?

 松下電器の中村社長の記事を読んだ。

彼は日本はやっぱり「ものづくり」にこだわるべきであると主張している。一般に良く聞く「これからはサービス業だ、製造業から転換するべきだ」理論(?)に真っ向から反論している。
 彼はその根拠として、確かに日本の産業別GDPではサービス業が6割、製造業が2割であるが、国際収支で黒字を稼いでいるのはやはり製造業である、という事実を挙げる。
(そのへんの数字はこのHPに同じようなことが書いてある)
 「アメリカを見習え」理論(?)に大しても米国の巨額の貿易赤字を問題視し、資源や食料に乏しい日本は見習うべきではないといっている。
 よって日本が経済大国の地位を維持するためには、やはり日本は「加工貿易国」で行くべきだ、と主張しているのである。
 このように中村氏は「日本はやはり製造業中心で行くべきだ」と結論付けるのである。
なるほど、なんか説得力のある議論だ。巷で氾濫する「金融、IT、万歳」理論(?)に胡散臭さを感じていた私はすごく納得してしまう。
 しかしながら一方で製造業に就職した理系の給料は相変わらず安いのは何故だ。
ここにもかいてあるけど。

労務行政研究所の調査によると、80年代後半〜90年代前半のバブル全盛期、大卒社員の初任給は製造業の方が金融・保険業より高い。しかし、金融・保険は昇給率が高いためすぐに逆転する。賃金構造基本統計調査(厚生労働省)では、業種別の平均賃金(男性)は85年以降、金融・保険、卸売・小売業、サービス業などの「文系業種」が、常に製造業を上回っている。全体の平均を100とした場合、製造業は96〜98、金融・保険業は130を超える。

 ここから浮かびあがるのは、日本は製造業中心で外貨を稼いでいるにもかかわらず、それを支える技術者にほとんど恩恵を与えてこなかった現実である。 
 「やっぱり日本は製造業だ」と言いつつもそれに見合う恩恵を技術者に与えていない現状では、「ものづくり」理論なんぞ絵に描いた餅ではないか。
 こう言うと「金じゃない」とかアホな理論で反論する奴は「医学部や薬学部」に人気が集まる現状を見ていない。これは高給が期待できるから、としか言いようがない。人材は金が得られる分野に集まるのである。

 だから私は中村社長に問いたい。

 「技術者の給料を上げてやるんですか?」
(この記事を書いた記者はなんでこれを問わなかったのか)

 これに「いいえ」と答えるんだったら、やっぱり日本の製造業の未来は暗いだろう。