すっかり元に戻った自民党

 揮発油税一般財源化、来年度は見送り…塩崎官房長官 

 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20061204i112.htm

 ある程度予想はしてたことだったが、アッサリ先送りである。復党問題で長老に振り回され醜態をさらした安倍。ここらでリーダーシップを発揮して巻き返しを図りたかった所だが、結局与党自民党の総反対の結果、あっさり見送りになった。小泉だったら解散にでも打って出るところだが、「普通の人」安倍にはそんな力量もないか。
 さて、もはや明白だが自民党は「小泉以前」にすっかり戻った。したがって政界の図式も小泉以前に戻ったことになる。

 つまり、自民党=現状維持を目指す保守勢力、民主党=改革で現状を打破する革新勢力という図式である。

しかしながら安倍はなおも「改革は続ける」と言い続けている。つまり自民党の看板は相変わらず「改革」だが、中身は「現状維持」ということになるのである。これでは旧来の支持層も混乱するし、小泉政権で取り込んだ新規顧客(笑)の「改革大好き無党派層」も混乱してしまう。
 安倍の姿勢は明らかにどっちつかずなのだ。
 元々小泉自民党の路線は原理的に矛盾していた。自民党は本来地方に強い政党である。地方では現実的な社民主義が人気があるからである。ところがそこに都市部優先の新自由主義路線を掲げる民主党が台等して来てついに比例では得票数が負けてしまうまでの事態になった。そこで人気挽回を図るべく「変人」小泉自民では大転換をはかり都市部に有利な新自由主義の旗を掲げる政党に生まれ変わったのである。これにより民主党の支持層を取り込むことに成功した。しかしこの路線は根本的に矛盾している。新自由主義的な路線をとれば取るほど従来の支持層は自民党から離れて行ってしまうからである。小泉の圧倒的な演技力で旧来支持層はなんとなく釣られて支持を続けていたが、正気に戻ってしまえば自分に何の得もないことに気づいてしまう。
 一方の民主党は元々「自民党の改革は偽者で民主党の改革が本物だ」と言っている党である。安倍が「小泉が進めた改革」を後退させたイメージをプンプン漂わせていることを考えると民主党の主張の正当性が復活してしまったことになる。
 改革競争ランキングの繰り上がり当選とでもいうのだろうか。忌むべき風潮だが、もはや世間的には改革=善であることが前提に成り果ててしまった。
 話を元に戻すが当然のことながら安倍はかなり苦しい。
 改革を掲げれば無党派層に嘘つき呼ばわりされ支持を失うし、改革で損をする旧来の支持層である地方の支持者からは胡散臭い目で見られる。一方で「小泉直後」ということもあり、元の地方を守る政党である自民党色を前面に出すわけにもいかない。
 安倍を擁護するわけではないが、これは安倍の責任ではない。全ては「小泉のやり逃げ」のせいである。誰がやっても苦しいのは分かっていた。だって元々矛盾してるんだもん。「小泉劇場」の公演が終わったから現実が迫って来たというだけの話だ。現実を忘れていられるのは観劇の間だけだ。
 こういう時に一番いけないのはどっちつかずの態度を取ることだ。安倍は演技力がイマイチなせいか、政局に揉まれてないせいか、状況をどうやって打開していいか分かっていないようである。当然、周囲の人の意見に振り回されることになる。政権の大黒柱中川秀直の振り付けでなんとか最低限の体面を保ってはいるものの、国民は見抜いているようだ。ジリジリと支持率は下がって来ている。
 個人的には抵抗勢力の復活は歓迎すべき事態ではある。私は元の自民党の現実的な社民主義路線こそが日本を繁栄させる路線であると確信しているからである。しかしながら改革=善に洗脳された国民は元の自民党に我慢できなくなる可能性も高い。そうすると来年の参議院選挙では自民党が大敗して、国民新党とかとあわせても過半数行かない事態も考えられる。そうなれば今度は「民主党の改革路線」とやらで日本がさらに破壊される事態になるやも知れん。
 前にも書いたbewaad氏の「笑えない未来像」がジリジリと近づいて行っているのである・・・orz

 これはもうダメかも分からんね。

参考:笑えない未来像