お祖父さんの夢を見た

 夢のお祖父さんは元気だった。お祖父さんはお祖父さんの従兄弟と一緒に僕を連れて山を登った。
 とても高い山だった。
 お祖父さんは元気だった。僕が小さいころの記憶のままに健脚で、私を置いて行きそうだった。
 途中で目が覚めた。
 夢を見ている間中、私はお祖父さんが生きていることをまったく不思議に思わなかった。
 妙な話だ。僕はお祖父さんが焼き場で焼けて骨になるのを確かに見たというのに...
 目が覚めて、なんだか悲しくなった。
 非科学的な話だが、その夢の印象を述べると、夢で見た、あの山の向こうはあの世だったのかも知れない。
 だから僕は途中で目が覚めた。
 でもお祖父さんはあのままどんどん登って、そしてあの世へ逝ってしまったのだろう。
 今になって、初めてお祖父さんがいないのだということに気づいたのだ。
 お祖父さんは最期の2年くらいはほとんど寝たきりだった。
 こんな言い方をするのは、かなり失礼だが、お祖父さんはこの2年くらいは死んだも同然だった。
 何しろ、話しかけても全然反応もしないのだ、何かお祖父さんとは違う別の人に話しかけているようだった。
 だからお祖父さんが死んだ時も、特別に驚きはなかった。
葬式でも格別に涙を流すということもなかった。
 しかし、今日の夢を見て、なぜか涙がこぼれた。
 僕の中でやっとお祖父さんが死んだ、という実感が湧いて来たのだ。
 いつも快活で、決して暗い顔はしなかった、そして、「本当かよ!」というくらい大きな話をして、そして笑っていた、あのお祖父さん。
 今になってお祖父さんのことが色々と思い出されてきた。